回転するタイヤは「バランス」が重要。 ホイールバランス調整について

新しいタイヤをホイールにはめ込んだら、ホイールがスムーズに回転するよう、バランス調整を行う必要があります。タイヤやホイールは、たとえ新品であっても重量バランスに僅かな偏りがあるため、そのままだとタイヤの回転時に振動が出てしまうからです。
ホイールバランス調整は、ホイールバランサーと呼ばれる専用設備とプロスタッフによる正確な作業が前提となりますが、その仕組みと重要性を、できるだけ分かりやすく解説します。

ホイールバランス調整の方法

バランスウェイト
タイヤは、ゴムやレーヨンなど、さまざまな構造材が複雑に組み合わされて作られています。その構造上、タイヤ周上の重量は完全には均一にはなりません。そこで、使用する状態、つまりホイールにタイヤを組み合わせた状態で重量誤差を修正する必要があります。具体的には、バランスウェイトと呼ばれる鉄製の小さな重りをホイールに装着して、重量バランスを修正しています。
ちなみに「ホイールバランス調整」とは、ホイールだけのバランス調整を指すわけではなく、タイヤとホイールが組み合わされた状態でのトータルでのバランス調整を行う、という意味になります。
(タイヤ組み付け後の)ホイールのバランス調整には、おおきく2種類あります。ひとつは、ホイールが静止した状態でもっとも重い箇所の反対側にバランスウェイトを取り付ける「スタティックバランス調整(静的なバランス調整)」と呼ばれる方法です。昔の乗用車によく使われていた細いタイヤや、オートバイ用タイヤなどで採用されています。
いっぽう、近年のクルマはグリップ力を高めるため、比較的太いタイヤを使う傾向があります。この場合、ホイールが回転しているときのバランスを取る「ダイナミックバランス調整」が一般的です。これはホイールの内側と外側、両方の重量アンバランスをそれぞれ修正するよう、1本のホイールに2箇所のバランスウェイトが取り付けられています。

作業には「ホイールバランサー」が不可欠

ホイールバランサー
バランス調整されていないタイヤ&ホイールは、2つの種類の『ブレ』を引き起こします。

(1)縦ブレ(クルマに装着した状態での前後方向のブレ)
(2)横ブレ(クルマに装着した状態での左右方向のブレ)

近年の乗用車に多く使われる比較的幅が広いタイヤの場合、縦ブレと横ブレの両方が生じます。そしてタイヤの幅が太くなればなるほど、横ブレが大きくなります。
このような2種類のブレをそれぞれ検知することができるのが、ホイールバランサーと呼ばれる専用設備です。これによって、バランスウェイトを具体的にリムのどの部分に装着すれば良いかが分かります。
ちなみに乗用車向けのバランスウェイトは、リムにはめ込むタイプの「打ち込み式」と、両面テープで接着する「貼り付け式」があり、5gきざみで最大50gまで用意されています。かつては比重が高く(重りとして最適)、加工しやすい鉛製が主流でしたが、環境への影響を考慮し、近年では鉄製が主流となっています。

タイヤが摩耗すると、バランスは崩れる

摩耗したタイヤ
クルマを走らせているうちにタイヤが少しずつ摩耗すると、せっかく調整したホイールバランスが崩れ、振動が起きることがあります。たとえば高速道路を走行中、時速80キロ付近で振動が発生するものの、それ以下、あるいはそれ以上の速度で振動が小さくなる、といったケースがよく見られるようです。ホイールバランスが崩れていると足回りの振動と共振してしまい、このような症状が発生します。バランスが狂っていると、車軸にはつねに想定外の負荷がかかり続けるので、大きく振動しているときだけが問題というわけではありません。
このようなときはホイールバランスを再調整する事で症状は改善されます。少しでも異常な振動を感じるようなら、早めに対処することでクルマへのダメージを最小限に抑えることができます。
ちなみにリアホイールの場合、なかなか異常な振動を感じにくいようです。できれば1年程度でのバランス再調整を行うのが理想と言えます。

バランス再調整では対処できないケースも

タイヤの摩耗だけでなく、ホイールの微細な変形によっても同様の振動症状が発生することがあります。この場合、ホイールそのものの修正が必要になってしまうため、単純なバランス調整作業だけでは問題を解決できません。また、タイヤが偏摩耗している場合なども、バランス調整を行うその前に、まずは偏摩耗の原因を突き止めて改善しなければりません。空気圧が適正ではない、アライメントが狂っている、荷重オーバー、といった要因が考えられます。
そのほかにも、タイヤの変形、ホイールナットのゆるみ、などの重大な問題による振動が起きている可能性もあります。運転中にいつもと違う振動を感じたら、まずは専門知識を持ったショップスタッフに速やかに相談することをおすすめします。

タイヤをはめかえたらホイールバランスを再調整

新しいタイヤに交換したら、ホイールはそのまま継続使用する場合であっても、もう一度ホイールバランスを調整しなければなりません。前述したとおり、タイヤそのもののバランスは最初から完全に均一ではないからです。まずは使っていたホイールに装着されているバランスウェイトをすべて取り外し、タイヤを装着した上で、改めてバランス調整を行うことになります。
ホイールのバランス調整は地味な作業ですので見過ごされがちですが、タイヤとクルマ本来の性能をしっかり引き出す上で、とても重要な作業です。タイヤ交換の際は、正しいノウハウと専門設備を整えたショップに依頼するようにしましょう。