タイヤの「規格」について 3つの主要な規格を解説する

タイヤは、主に製造される国により定められた規格に沿って作られています。バスなどの大型車まで含めると規格はいくつかありますが、私たちが日常的に使う乗用車の規格は主に3種類あり、規格ごとにサイズや空気圧に対する負荷能力が異なってきます。
タイヤ交換でこれまでと違う規格のタイヤを選んだとします。車種ごとの適性空気圧は車メーカーが指定しているため、異なる規格のタイヤを履いたのに前のタイヤとまったく同じ空気圧にしていると、適正空気圧ではないので、さまざまなデメリットが生じます。
タイヤ選びに迷ったら、ショップスタッフのアドバイスが有益ですが、事前に自分の愛車のタイヤサイズと、適正空気圧を知っておくことも大切です。ここでは、世界に流通する主な自動車タイヤの3つの規格について解説していきます。

国産メーカーが多く採用するJATMA

国産メーカーが多く採用するJATMA
日本の国産車が、新車時に装着しているタイヤは、ほぼすべて日本のタイヤ規格であるJATMA(ジャトマ)に合わせ設計されていると考えていいでしょう。
JATMAは「一般社団法人 日本自動車タイヤ協会(Japan Automobile Tyre Manufacturers Association)」の略称です。JATMAを構成する会員企業は株式会社ブリヂストン、住友ゴム工業株式会社、横浜ゴム株式会社、TOYO TIRE株式会社であり、さらに準会員企業として日本ミシュランタイヤ株式会社、日本グッドイヤー株式会社も名を連ねています。
JATMAでは安全走行を確保するため、車両と用途に応じた適切なタイヤ、チューブを決めています。それと同時に、タイヤ交換の際、自動車メーカーが指定したタイヤ以外のタイヤを選定する場合は、「JATMA YEAR BOOK(日本自動車タイヤ協会規格)」などで認められているタイヤの中から代替可能なタイヤを選ぶことを推奨しています。

ヨーロッパ基準としてメジャーなETRTO規格

ヨーロッパ基準としてメジャーなETRTO規格
日本のJATMAと並んで、もうひとつ知っておきたいのがヨーロッパの規格であるETRTO(エトルト)です。「欧州タイヤとリム技術機関」の略称であり、正式名称は「European Tyre and Rim Technical Organisation」となります。ヨーロッパのタイヤ規格であるものの、日本の国産新車の一部では、サイズによってETRTOのタイヤを採用しているケースもあります。
そして、ETRTOはスタンダード(STD)と、エクストラロード(XL)の2つに細分化されます。最もオーソドックスなものがその名の通りSTDですが、近年、目にする機会が増えているのがXLです。別章で詳しく解説しますが、STDとまったく同サイズのタイヤでありながら、より多くの空気を入れられる特殊な構造で作られているため、高い負荷能力に耐えられる強化版タイヤと覚えておくと便利です。

アメリカは、TRA規格

アメリカは、TRA規格
日本のJATMA、ヨーロッパのETRTOと並ぶのがアメリカの規格である「TRA(ティーアールエー)」です。TRAは「The Tire and Rim Association」の略で、アメリカでのタイヤとリムの標準規格となります。乗用車では、オフロード走行が得意なクロスカントリー、SUV(スポーツユーティリティビークル)といった車種のタイヤでTRAは採用されるケースが多いです。
TRAは、乗用車以外にフォークリフト、ダンプカーといった工事現場で活躍する車のタイヤ規格としても、よく用いられます。
なお、現状では国によって異なるタイヤの規格ですが、これを世界基準で統一しようという動きもあるものの、まだ実現には至っていません。

最も重要なのは結局、適正空気圧

最も重要なのは結局、適正空気圧
みなさんは自分の愛車の適性空気圧をご存知でしょうか。国産車なら、運手席側ドアを開けたところのドア側面、あるいはBピラーといった支柱に貼られたステッカーに書かれています。また、海外の輸入車は、Bピラーやドアの側面、なかには給油口の裏側に貼ってある場合もあります。
適性空気圧ではない場合、どういった弊害が生まれるのでしょうか。たとえば、空気圧が高すぎると、タイヤのセンター部分の偏摩耗が起こりやすくなり、タイヤの寿命が短くなるとともに、乗り心地が悪化します。
いっぽう空気圧が低すぎると、転がり抵抗が増えるために燃費が悪化するほか、タイヤが偏摩耗しやすいため走行性能事態も悪くなります。最悪の場合、タイヤの異常発熱、構造に損傷が発生する可能性もあるのです。ですが、適正空気圧を保っていれば、タイヤ本来のグリップ力を引き出せる、タイヤの寿命を伸ばせる、偏摩耗が起こりにくいといった利点が生まれます。

荷重指数と指定空気圧から負荷能力を導く

荷重指数と指定空気圧から負荷能力を導く
どの規格のタイヤなのかを見分けるには、タイヤの側面で刻印を探しましょう。「EXTRALOAD」、または「XL」と書かれていればETRTOのXL規格、Eマークだけが刻印されていればETRTOのSTD規格です。いっぽう、こうしたEマークが見られないタイヤの場合は、ほぼJATMAであるといえます。
標準でJATMAのタイヤを履いていたものの、ETRTOのタイヤに交換した場合など、異なる規格のタイヤにした場合、下記の手順で適正空気圧に再設定する必要があります。
適性空気圧の数値

  1. ドア側面のラベル、またはタイヤ側面を見て荷重指数と適正なタイヤ空気圧を調べます。「215/60R16 95Q」と書かれていた場合、最後の数字「95」が荷重指数(ロードインデックス)です。同じくドア側面のラベルに「前・後輪」の空気圧が「210kPa」と書かれていたとします。
  2. JATMAの乗用車用負荷能力対応表を見ます。荷重指数「95」、空気圧「210」の場合、負荷能力は「640kg」ということがわかります。
  3. 次にETRTOの対応表を基に、適正空気圧を調べます。荷重指数95、負荷能力640の場合、適正空気圧は「230kPa」です。上記の表より、最も近い負荷能力645で数値を導きます。

このように、例に挙げた数値だけを見ても、規格が違えば「20kPa」の適性空気圧の数値の差が生まれることもあります。 タイヤの規格によって適正空気圧が変わることを念頭に置きながら、正しい使用方法でタイヤを使うようにしましょう。

参考:JATMA 乗用車用負荷能力対応表(PDF)